ランニングを始める前は体重93㎏、走る医師の福田六花先生(55歳)が今「MCTオイル」に注目している理由は?(聞き手・東海林美佳)
福田六花 ふくだ・りっか
医学博士、ミュージシャン、ランナー。1965年東京生まれ。マラソン、トレイルランなど年間30レースに出場するほか、UTMFをはじめとするトレイルレースのプロデューサーも務める。山梨県老健協議会・会長。フルマラソン自己ベストは3時間6分01秒
福田六花さんは外科医だった約30年前、不規則な生活によって体重が93㎏まで増えたことをキッカケにランニングを始めた。1999年の初マラソン(第1回長野マラソン)は4時間54分で本人いわく「ボロボロになっての完走」だったが「次こそはしっかり完走したい」とトレーニングを続けると、その1年後にサブフォー、2014年の別府大分マラソンでは現在の自己ベストとなる3時間6分01秒をマークした。体重は61㎏まで落ちた。河口湖に移住してからトレイルランを始め「MIWOK100(米国/100km)」などを完走。最近ランナー仲間の間で話題になっているのが「MCT オイル」だという。
「多くのレースで中止が続いていることは残念ですが、再開された際にはフルマラソンを3時間15分程度では走りたい。そのために現在の月間走行距離は250kmで、気温が氷点下まで下がる中、河口湖湖畔でトレーニングを行っています。休日には仲間とともに50kmを超えるトレイルランもしています」
「トレラン仲間や先月のランナーズに登場した藤原新さんからも『MCTオイルは脂肪を燃やすのに最適。エビデンスもある』と聞いていたので、興味を持っていました。これまでは自分がプロデュースするものも含めて年間30~40レースに携わる中で、食生活やサプリメントを変えるキッカケを作る時間がなかったですが、(レースがない)今は新しいことに取り組む、具体的には『走る際に脂肪を利用できる身体にシフトさせるチャンス』だと考えています」
「ここ20年ぐらいずっと、レース前に糖質を多くとる、いわゆるカーボローディングを意識的に行っていました。たとえばレース当日の朝はおにぎり3個とカップうどん、そしてデザートにお汁粉。それらをなんとか食べ切ってグリコーゲンを満タンにしてスタートラインに立ち、30km以降にエネルギー切れをするかどうかという状態でした。そのため、今後記録を伸ばしたり、フルマラソン以上の距離のレースで結果を出すためには『脂肪をエネルギーとして利用できるようにならなければならない』と考えました」
「今後はそのようなロングトレイルに重きを置いていきたいと思っています。レース中はエネルギージェルや補給食もとるのですが、レースの後半になってくると胃腸が疲労して(補給食を)消化・吸収できなくなったり、食べられなくなることがある。そうなった時のためにも脂肪をエネルギーに変えて走れるようになる必要があります」
「やはりエビデンスがあるので信頼できますし、これまでお話した理由から理にかなっています(下記)。そもそも脂肪は糖質よりもはるかに多くの量を貯蔵できるエネルギー源でもありますので脂肪を利用できるようになれば、長距離レースでの補給の考え方を変えることができると思っています」
「コンビニでカフェラテを買った時にパウダータイプのものを入れて飲んだり、ゼリータイプのものをそのまま食べています。長い距離を走る時もバテにくい実感はあって、早くレースの極限状態で試してみたいですね」
MCTオイルとは、中鎖脂肪酸100%のオイルのこと。中鎖脂肪酸はココナッツオイルなどに含まれる成分で、オリーブ油やなたね油、ラードといった通常食事で使われる油(LCT)よりも消化吸収が速く、すぐにエネルギーになりやすいという特長がある。一般的な油の4~5倍も速く分解されるので、栄養補給源として医療現場やスポーツ界で注目されている。
継続的な運動とMCTの継続摂取でミトコンドリアが増えるなど、脂肪をエネルギーとして利用しやすくなることが報告されている。
MCTオイルを6週間継続してとると、
脂肪を燃焼する際に働く「ミトコンドリア」が筋肉中で増加した
※1:Holloszy J.,J Biol Chem ,242(9) ; 2278-2282,( 1967)
※2:Fukushi et al.J Nutri. 1995
MCTオイルを2週間とると、同じペースで走った時の脂肪利用割合が
高くなった(結果として糖質を温存することができる)
※3:Nosaka et al. J Oleo Sci.2018; 67(11):1455-1462を改変
[資料引用] 日清オイリオ MCTサロン https://www.nisshin-mct.com/